東日本部落解放研究所

第26回総会を5月28日に開催 [ 2011-06-27 ]

カテゴリ:報告情報

挨拶する鐘ヶ江理事長 講演は石田貞さん

本研究所の第26回総会が、5月28日(土)、午後1時15分から、東京・上野池之端の上野区民館で開催された。総会に先立って、鐘ヶ江晴彦理事長の開会挨拶のあと、来賓として、関東ブロック副議長の長谷川三郎氏、東京人権企業連専務理事の竹内良氏のご挨拶をいただいた。

総会は井桁碧氏を議長とし、活動報告、会計報告、新年度活動方針案、予算案を原案通り承認・議決した。会員・賛助会員のみなさんには、すでに総会議案書はお配りしてあるので、ここでは内容は省略させていただく。なお、議事にさきだって、鐘ヶ江晴彦理事長から、4月25日の理事会で決定された人事について報告があり、長らく事務局長を務めてきた藤沢靖介が副理事長に選出され、昨年の総会で副理事長となった吉田勉が事務局長に指名された。

石田貞氏が講演

「同和教育の現状を考える」

-若者の意識をてがかりに-

第26回総会終了後、休憩をはさんで、「同和教育を考える-学生の感想文を手がかりに-」と題して、石田貞さんからご講演をいただいた。

石田さんは、ご存じのように、長年にわたり埼玉県立高校教員として同和教育に取り組み、埼玉県同和教育研究協議会(現埼玉県人権教育研究協議会)の会長や、東日本部落解放研究所の事務局長・副理事長などを務めるとともに、関東大震災時の朝鮮人虐殺、朝鮮人強制連行の調査など長く朝鮮問題に取り組み、また現在でも、埼玉県内のブラジル人学校の支援などに取り組むなど、ますます元気な大先輩である。

今回の講演テーマは、そのサブタイトルにあるように、石田さんが2001年から2003年にかけ、特別招聘講講師として、慶應義塾大学文学部講座「人の尊厳」の部落問題を担当した経験から、受講した学生のリアクションペーパーに記された感想文をてがかりに、若者の意識状況についてご報告いただいた。なお、講座「人の尊厳」が設置されたきっかけとなったのは、元慶大生による連続差別脅迫ハガキ事件であった(部落解放同盟東京都連合会ホームページ参照)。

さて、石田さんの「人の尊厳」における講義は、「部落の歴史と差別の現状」をテーマに、①歴史をとおして部落問題を考える、②部落問題の実態と課題、という2本立ての構成であった。石田さんいわく、単なる知識の提供ではなく、自らの同和問題・在日朝鮮人問題との出会いを語り、あくまで埼玉という地域の部落差別の歴史と実態を踏まえて講義する、というスタンスを貫いたという。

学生たちの感想は、「初めに話された『寂しかった結婚式』の話を聞いてなんかとても寂しい気持ちになった。事実をしっかり、理解して、はっきりした考えを持っていかないと、差別をする人になってしまうのではないか」「特に『祭礼参加問題』については、考えるものが多かった。解放令という法の制定による形式上だけの見直しだけでは、問題解決にいたらず、人々の行動や社会の態勢がともなわなければならない」といった部落差別の現実に反応するもの、自らが部落出身者であることを名乗るもの、自分の兄の部落差別をめぐる結婚問題について書くもの、沖縄出身を名乗り「昔は朝鮮人同様差別されていたようで、私も他人事には感じられない」と記すもの、「同和教育は必要…問題はその中身」「部落問題は、授業でも取り上げられるが、あまり詳しい話は聞いたことがない。多分教えるほうの先生も、あまりそのことについて認識や知識がないのだと思う」などの学校同和教育の現状へのコメントなど、多彩な反応があったという。

質疑応答では、長谷川三郎さんから元慶大生による連続差別脅迫ハガキ事件の取り組みについて、井桁碧さんからは同じ慶應大学で講義を担当したことがあるが「差別はなくならない」という学生の反応があったこと、鐘ヶ江晴彦さんからは学校同和教育と家庭で伝える部落イメージとの関わりをどう考えるか、川向秀武さんからは学生のリアクションペーパーを次の時間に学生にフィードバックした自らの講義実践や、かつて慶應大学部落研が信州の調査など先進的な役割を果たしたこと、内藤武さんからは立教大学でも差別発言を契機に部落問題の講義が現在も続けられていること、などが述べられた。(報告/吉田勉)


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