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「いのちの電話」ってどんな団体?/内藤武(狭山部会) [ 2009-09-01 ]

カテゴリ:情報提供

私は1991年9月に開設された「埼玉いのちの電話」の準備段階から研修担当として関わってきました。 「いのちの電話」とはどのようなボランティア団体かを以下ご紹介いたします。

いのちの電話は、孤独の中にあって、精神的危機に直面し自殺を考えている人をはじめ助けと励ましを求める一人一人と「電話」という手段で対話し、かけ手が新たに生きる勇気を持つに至ることを目的としています。「匿名性」と「一回性」を基本とし、話された内容は部外秘が厳守されています。そして自己負担の電話代以外は無料です。

匿名性とは電話のかけ手は氏名を名乗らなくていいことです。受け手も名乗りません。このことによって話しにくい内容も話しやすくなります。

一回性とは、1回の電話で終わる一期一会の関係のことを言います。この運動の生みの親は1953年イギリスで始まった「サマリタン(Samaritans)」(良き隣人)運動です。

誰にも相談しないまま、生理の血を梅毒と誤認して自殺した一少女への痛みから一牧師の提唱で始まった自殺予防の素人ボランティア電話相談です。医師・カウンセラー等の治療的関わりとは異なったボランティアの“友になる(befriending)”関わりにプロが発揮できない力のあることに気づいたのです。

日本では1971年10月東京に「いのちの電話」として発足し、2008年現在では全国に50センターが設置され、約7,000人のボランティアが活動しています。年間の相談件数は約72万6千件です。年中無休、毎日24時間態勢の電話受付を基本としていますが、ボランティア数等との関係で実現されてないセンターもあります。相談内容を多い順に挙げてみます。人生、保健医療、家族、対人、夫婦、男女、法律・経済、教育、性、その他で、この中で自殺を考えている電話の率は毎年高くなっています。かかってくる電話が非常に多く、何回かけてもつながらないという苦情が各センター事務局に寄せられているのが実情です。

電話ボランティアになるためには一定時間の研修を受けなければなりません。私が関わっている「埼玉いのちの電話」の研修期間は約1年半です。毎週1回2時間の体験学習の他に講義が10回と、2泊3日の合宿研修があります。悩みはボランティアの人数が増えないことです。

20数年間「いのちの電話」に関わってきて思うことは、私達の住む日本社会が如何に“いのち”を軽く見ているかということです。自殺者は1997年に23,494人、1998年は約8,000人増え、31,755人と3万人を超え、それ以後11年間3万人台です。総数33万人を超えています。日本全国で毎日90人近い自殺者が出ていることになります。自死遺族の子供達が勇気を振るって声を上げたことが契機になり、初めて自殺問題が国会で議論され、2006年自殺対策基本法が制定されました。それにもかかわらず、自殺者数はほとんど減っていません。最近になりやっと自殺は自己責任ではなく、追い込まれた末の自殺という認識に変わってきています。国の政策や無作為によって自殺に追い込まれる人が多いのです。この意味で国・地方を問わず、生命・人権・生活を第一優先するよう政治を変えていくことが大切と思います。そして、孤独で精神的・経済的危機にある人を地域がどう見つけケアーしていくか、そのためのネットワーク作りが今必要と思います。

とはいえ、身近に悩んでいる人がいたら時間を取ってその人の話を聴くことが自殺防止の第一歩だと思います。
(『明日を拓く』77・78号、「会員・読者のページ」から転載)

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